ポジティブ心理学の研究領域にポジティブ感情があります。
ポジティブ心理学とは、1998年に当時全米心理学会会長であったペンシルベニア大学大学院マーティン・セリグマン教授が提唱した心理学的分野です。
従来の心理学は、病理的療法（欠陥、疾患、問題、メンタルヘルス不調、患者、治療、処置等）に焦点をあてていたことに対し、セリグマン教授はひとの良いところに焦点をあて、人生を最も価値あるものにする学問、つまり人がいまよりも幸福になるにはどうすれば良いかを追求し、確立しました。
今回は、このポジティブ心理学の研究領域の中で最も研究が集中的に行われているポジティブ感情についてご紹介いたします。
わたしたちが日々感じるポジティブ感情・ネガティブ感情
わたしたちは、ポジティブ感情を経験することもネガティブ感情を経験することも日常的です。
ポジティブ感情の第一線の研究者であるノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン教授は、ポジィティブ感情には、「喜び」、「感謝」、「やすらぎ」、「興味」、「希望」、「誇り」、「愉快」、「鼓舞」、「畏敬」、「愛」の10の感情が存在していると提唱しています。
フレドリクソン教授が提唱している拡張形成理論によると、ポジティブ感情は、わたしたちの選択肢を増やし、思慮深く、創造的に思考の幅を広げてくれると定義づけています。
また、ネガティブ感情には、「怒り」、「恐れ」、「不安」、「悲しみ」、「失望」、「羞恥心」、「罪悪感」があります。
ネガティブ感情は、闘争逃走反応（Fight-or-flight）が働き、わたしたちの行動の幅を狭めることに有効ですが、反面、多用することによって、わたしたちの行動の幅を狭めてしまう原因にもなります。
ポジティブ感情とネガティブ感情は測定することができる
わたしたちが日々感じるこの2つの感情を計測する尺度としてPANAS：Positive andNegative Affect Scheduleがあります。
PANAS（ポジティブ・ネガティブ感情スケジュール ）は、1988年にワトソン、クラーク達が提唱したポジティブ感情とネガティブ感情の2因子構造で成り立ち、安定した信頼性と妥当性を与えてくれます。
20項目の質問項目を答えることによって、ポジティブ感情とネガティブ感情の割合を抽出してくれます。
ポジティブ感情とネガティブ感情の黄金比率は？
ポジティブ感情とネガティブ感情の黄金律として有名なものは、フレドリクソン教授がマーシャル・ロサダと共同研究したポジティブ感情とネガティブ感情の黄金律：3対1です（正式にはポジティブな相互作用とネガティブな相互作用の対比：2.9013：1）。
しかし、数年前に他の心理学者より科学的根拠がないと指摘され、フレドリクソン教授は科学的根拠に基づいたものではなかったことを認め、ポジティブ感情とネガティブ感情の比率は1対Ⅰと訂正しました。
別の研究者の黄金律をみると、ロバート・シュワルツ博士は、幸福な人は4:1、普通の人は約2:1、うつ病の人…1:1以下と公表しています。
また、ペンシルバニア大学ウォールトンスクールのシガル・バーセイド教授の研究では、5人のグループに上機嫌または不機嫌な人がいるだけでグループの雰囲気が変わるとも発表しています。
研究者によって黄金律はまちまちで統一されていないことが結論ですが、総じていうと3対1くらいの割合でポジティブ感情とネガティブ感情の比率を持つことが良いことはわかるのではないでしょうか。
今回は、ポジティブ感情とネガティブ感情についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか？
日々、少しの工夫によってポジティブ感情を高めることはたくさんできると思います。
ポジティブ感情高めるを意識して、幸せなひとづくりをしていきましょう。